Vol. 2 革の「なめし」と環境問題
動物の「皮」が原料である「革」製品。原料の「皮」が、製品の素材「革」なるには「なめし」という行程が必要になります。簡単に言うと、生き物であった「皮」は、自然と腐敗や硬化などの劣化をしていきますが、それらを防ぎ、製品に使える素材として加工するのが「なめし」です。
思えば、革製品は、狩猟を始めた原始の頃から人類とともにあったもの。自然の理に反する、「腐らない」「固くならない」知恵をその頃から持っていたなんて、改めて驚きです。
さて、時代が進むにつれ「なめし」の技術も進化していきました。革製品の産業拡大にともない開発されたのがクロム鉱石を使う「クロムなめし」。従来のなめし法より安価で大量に生産できる上、従来の方法より「発色がよく、変色が少ない」「革の弾力性を保つことができる」「柔らかい革から硬い革まで作ることができる多様性」など利点が多くあり、急速に世界中に広まり多く使われるようになりました。
革製品の生産拡大に大いに貢献したこの方法ですが、近年、クロムによる環境汚染が問題視されるようになりました。クロム自体に毒性があるのではないので、製品自体の安全性に問題はありません。しかし、工場排水に含まれる重金属が環境破壊につながるため、いまでは排水の規制が強化されています。また、工場で働く人にも重大な健康侵害がみられることが分かり、現在では使用自体を縮小する傾向にあります。
クロムなめしを縮小するにあたり、再度見直されてきているのが従来のなめし法です。例えば、植物から抽出したタンニン剤でなめす「タンニンなめし」などは「フル・ベジタブル」として、環境保護の視点から注目を浴びています。他にもミョウバンを使った「アルミニウムなめし」や「アルデヒド」を使うなめしなど、伝統的な方法が今見直されています。しかしどのなめし法も一長一短で、発色、革の柔軟性、耐久性を幅広く網羅するクロムほどの便宜性はなく、より良い方法が日々試行錯誤されています。
私たちの生活を原始からずっと支え続けてきた革製品。その先人たちの知恵も借りつつ、新しい知恵も加えつつ、環境問題というハードルを越えて、革業界はさらなる発展を目指し動いています。